日本の掃除

きれい好きは変わらない?日本の掃除の歴史

外国人が日本を訪れて感じることの一つに、日本人のきれい好きがあります。
道にごみが落ちていないですとか、電車の座席や公共施設の中がいつもきれいに掃除されているといったことに、外国人は大きな感銘を受けるそうです。
そう、自分たちでは気づきませんが、日本人はかなりのきれい好き。
つまり、掃除好き。
そんな、日本人の掃除好きな歴史を、今回はひも解いてみたいと思います。

 

縄文時代の掃除
● 縄文人だって掃除はしていた?!

もちろん文献は残っていませんが、一般的には日本の掃除の歴史は縄文時代にさかのぼります。
そうはいっても、別に箒らしきものが出土したとか掃除をしている人間の絵が見つかったなどということはないのです、が、ほぼ間違いないとされています。というのも、縄文人は、長生きだったのです。

なんと、聖マリアンナ医科大学の講師長岡朋人さんの研究によると、発掘した縄文人の骨のうち、その3割は65歳以上だったということなのです。
これはかなり長生きだったことの証明で、そしてそれは縄文人がきれい好きっだったことにつながります。

というのも、高温多湿の日本において、竪穴式住居はかなり不衛生な建物です。そんな建物の中で、掃除もしない人たちがそこまで長生きでいられるというのはなかなか考えにくいことだからです。
そう、縄文人の頃から、日本人はきれい好きだったわけですね。

 

古事記
● もっとも古い文献はなんと古事記!

掃除に関して書かれている日本の古い文献は、なんと古事記にさかのぼります。
歴史の教科書で習いましたよね、そう、古事記とは日本最古の歴史書といわれるあの古事記です。

古事記の中には「天若日子が死んで、その妻の下照比賈が喪屋を建て、鷺を掃持した」という記述があり、この「掃持(さきもち)」という言葉が、つまりは掃除に当たるとされています。

平安時代の掃除
平安時代、掃除というものはきれいにするという意味とともに、神事の意味合いも持っていました。
いまでも、箒で掃くことを「掃き清める」という人がいますが、この清めるという行為こそが、悪霊や悪い神様を追い払うという意味なんですね。
ですから、箒という掃除道具が、まるで神器のように扱われてもいたのです。

もちろんこれも、掃除をしてきれいにすることが、健康や長寿につながっていくということを知っていた証であり、また、掃除をしてきれいに保つことの価値が決まっていった過程だとも言えますね。
ちなみに、今でも京都などには箒を逆さに立てると客が帰るという「逆さ帚」おまじないがありますが、これも箒が神聖な道具だからこそ、生まれた風習です。

 

江戸時代の掃除
● 江戸は世界最初のエコタウン

さて時代はぐんと近づいた江戸時代。
日本どころか世界中を見渡しても、これほどまでに人口密集地帯はなかったといえるほど、世界最高レベルの繁栄を極めていた江戸の町。そんな江戸の町は、なんと世界最初のエコタウンだったのです。

はき掃除をした後のごみの中から髪の毛をより集めてカツラ屋さんに売ってみたり、紙くずを集めて漉き直して再利用したり、武家屋敷や寺社仏閣の溶けたろうを集めてろうそくを作り直したり。

しかもこれらすべてが、商売として成り立っていたのですから驚きです。
つまり、江戸時代における掃除というのはただきれいにするだけではなく、再利用資源を集める意味があったというわけです。

丁稚の掃除
もちろん、きれい好きは変わりません。
商家の丁稚(でっち)さんが一番初めに習うことは、読み書きそろばんよりもまず掃除。
これは、どんな商売であっても、一番大切で商売の基本になるのはきれいに掃除することだったというのですから、ある意味いまよりきれい好きだったのかもしれません。

 

明治時代の掃除
● 明治にはなんと掃除は法律に!

そんな江戸が過ぎた明治時代、なんと日本では掃除が法律になります。
それが、1899年に制定された「汚物掃除法」。

当時は、開国に伴って世界中から様々な病気が日本に上陸してしまい、日本において公衆衛生という概念が必要とされる時代でした。
もちろん、日本人のきれい好きはこの時も健在でしたが、組織的にそれを法律化したのがこの法律なのです。

この法律、その第一条において「汚物掃除法ニ依リ掃除スヘキ汚物ハ塵芥汚泥汚水及糞尿トス」と、法律が適用される掃除すべきごみの種類が書かれているほど徹底された法律でした。これによって日本に公衆衛生を国家が管理するという考え方ができた記念すべき法律なのです。

この法律から今に至るまで、日本という国が清潔で衛生状態が保たれているのは、この法律ができたおかげだといえるかもしれませんね。

 

● 掃除はもはや日本の心

いかがでしたか、掃除の歴史。
昔から、それこそ縄文時代から日本人は、掃除が大好きできれい好きな民族だったんですね。こうなるともはや、掃除をするという行為は日本人の心であるといってもいいかもしれません。

時には、外国人の目線から日本人は潔癖すぎるなんて言われることもありますが、もうそんなこと気にしてはいけません。
掃除好きできれい好きなのは、日本人の心です。
毎日しっかり掃除して、きれい好きな日本人の心を後世に伝えていきたいですよね。