光沢

ワックスで光沢を上げたければ、まず原理を理解しよう!

清掃の仕事をするうえで知っておかないといけない知識は山ほどありますが、「光沢」はその中でも重要な知識の1つと言えます。

 

「光沢」と聞いて最初に何を思い浮かべるでしょうか。

 

ビルメン系の方なら床面に塗布したワックスの仕上がり具合について思い浮かべるかもしれませんし、ハウスクリーニング系の方ならステンレス製のキッチンシンクや陶器製の便器、洗面台を思い浮かべるのではないでしょうか。

この「光沢」の原理を知っておくことは、清掃の品質を上げることはもちろんですが、思ったように光沢を出せないときの原因究明やお客様から光沢について質問されたときにご納得いただける説明が出来るようになるのではないでしょうか。

 

ごたくはこの辺にしておきまして、「光沢」について考えてみましょう。

「光沢」は、物の表面に光を当てたときに表面が輝く性質のことです。もっと分かりやすく言うと、光を当てたときの反射具合になります。

物の表面に光が当たって反射するときは、下図の2パターンがあります。

 

1つ目は光沢度の高い表面に光を当てた場合、光は最初に光を当てた角度で反射していきます。これを「鏡面反射」といいます。
光沢度の高い表面は、平坦で触るとつるつるしている素材が多く、ガラスや金属などがあります。
光沢

 

2つ目は光沢度の低い表面に光を当てた場合、光は様々な角度に拡散していきます。これを「拡散反射」といいます。
光沢度の低い表面は、凹凸があり触るとザラザラした素材が多く、すりガラスや和紙などがあります。
光沢

 

光沢度の高い・低いについては、この「鏡面反射」と「拡散反射」の割合によって変わります。
つまり、光沢度の高い表面は、「鏡面反射」の割合が「拡散反射」より高く、光沢度の低い表面は、「拡散反射」の割合が「鏡面反射」より高くなります。

また、実際に物の表面に光が当たって反射するときはこの2パターンだけでなく、光の一部は素材を透過したり吸収されたりします。ワックスを重ねて塗布した床面の場合、光がワックスの表面で反射する光と内部に透過して拡散・吸収されていく光に分かれます。

 

以上の内容を踏まえて、一般的な床面ワックス塗布を行ったとき、どのように光沢が出てくるのかを見ていきましょう。

今回例として使用するのは、室内の床材として多く使われている塩ビシート(Pタイル)で考えたいと思います。

塩ビシートは種類が豊富なので一概に言えない部分もありますが、ワックスを塗布していない塩ビシートは光沢がほとんどなく、表面は小さな凹凸があり平坦ではありません。
光沢

 

この状態からワックスを1層塗布するとどうなるでしょうか。

塩ビシートの表面の凹凸にワックスが入り込み、表面が平坦になります。ワックスの表面で「鏡面反射」する光とワックスの内部へ透過し、素材部分で「鏡面反射」と「拡散反射」する光に分かれます。
結果的には、「鏡面反射」の割合が上がるので、それに応じて光沢度も上がります。
光沢

 

続いて2層目のワックスを塗布してみます。

まずワックスの2層目の表面で「鏡面反射」する光とワックスの内部へ透過する光に分かれます。透過した光はワックスの1層目の表面でさらに「鏡面反射」する光とワックスの内部へ透過する光に分かれます。透過した光は素材部分で「鏡面反射」と「拡散反射」する光に分かれます。

下図のように「拡散反射」より「鏡面反射」の割合が大きくなるので光沢度が上がります。
光沢

「鏡面反射」の割合がある程度大きくなると、ワックスを3層、4層・・・と重ねても光沢はそれ以上に上がることはありません。

 

 

如何だったでしょうか。

今回出てきた言葉を覚える必要はありませんが、「光沢」の原理を理解しておくと、実際の現場で床面の状態を見たときに、適正な判断をし易くなるのではないでしょうか。

 

一応注意点ですが、今回はあくまでも新品で凹凸のある塩ビシートにワックスを塗布した場合を想定して光沢の上がり方を見ていきました。素材の汚れ具合、凹凸の深さ、ワックスの性質など、状況によってアプローチの仕方が変わってくることはご理解下さい。